ScentAir_Retail_Trend_2025
ブログ

ウェルネスからクリエイターコマースへ:2025年の小売業界を再定義するトレンド

進化し続ける小売業界では、消費者の嗜好や市場の動向を先取りすることが成功の鍵になります。

最新のトレンドは、買い物客の行動が変化するだけではなく、彼らが何を優先しているのか、その価値観も反映しています。健康ブームからフィジタル(現実とデジタルの融合を指し、技術発展によりオンラインとオフラインの境界が曖昧になっている現象)や、クリエイターコマースの出現まで、小売業界は今まさに変革のさなかにあります。また、持続可能な取り組みが新しい基準となり、企業の運営方法や地域社会との関わり方が変わりました。これらのトレンドを掘り下げていくと、依然として、顧客体験を重視することが小売業界の成功の鍵であることがわかります。

 

Wellness Is Everything

現代社会におけるストレスの多さに応じて、小売業界全体でウェルネス分野が急成長しています。2024年初頭に実施されたユーロモニターの「Voice of the Consumer: Health and Nutrition Survey」によると、Z世代の39%、ミレニアル世代の36%が日常的にストレスや不安を感じていると報告されています。[1]

MG2(アメリカ・ワシントン州シアトルに拠点を置く建築・デザイン事務所)が実施した調査では、買い物客がライフスタイルの意思決定においてウェルネスを優先し、心と体の両方に幸福感を伝えるディスプレイを非常に重要視していることがわかりました。音、香り、視覚の要素が、記憶に残る体験を構築するための店舗内の重要な要素として挙げられています。

この調査では、今日の「ウェルネス」が多様な解釈をされていることがわかります。調査参加者の54%はランニングやヨガなどの身体活動がマインドフルネスを促進する手段である、挙げました。48%は、瞑想やリラクゼーションのためのプライベートな空間が、幸福を感じるために重要であると回答しました。約60%の回答者が、瞑想や運動などの活動を通して幸福を感じられる場所を求めました。その結果、多くの小売業者が空間を「ウェルネスハブ」として再設計し、瞑想セッションやメンタルヘルスワークショップなどのサービスを提供しています。

精神的な健康を支援する製品の需要が高まる中、小売業者はウェルネスを包括的に捉えた商品ラインを拡大しています。「癒し」「静けさ」「活力再生」の3つが、消費者中心のウェルネス体験におけるブランドが強調すべきテーマとして特定されました。

この現象は、多くの業界で観察することができます。ホーム&ガーデン部門では、ウェルネスに焦点を当てたブランドや健康志向の商品がカテゴリー内で持続的に高い成績を収めています。スポーツウェア業界のリーダーは女性層に注力しています。例として、プーマによる女性のACL(前十字靭帯)損傷に関する研究や、ナイキの「Coaching HER」の率先、アシックスの、運動が精神的な健康へもたらす利点を推進するキャンペーンがあります。

成功しているブランドが、明確な差別化のため、ウェルネスをプレミアム製品として位置付けています。この傾向は、栄養やパーソナルケアなどの業界で特に顕著であり、ウェルネスを軸としたアプローチにより、大きな進歩を遂げています。

 


フィジタル・リテール: 消費者に両者の長所を提供

「フィジタル・リテール」は、「ハイブリッドショッピング」とも呼ばれ、小売業界における実体験とデジタル体験を組み合わせた新たなトレンドであり、両方の領域をスムーズに行き来できるショッピング体験を提供します。

世界的な調査によると、消費者の59%がオンラインショッピングを好んで使っているのに対し、41%は依然として実店舗で買い物をすることを好みます。ベビーブーマー世代は一般的に、この従来のショッピング方法を好む傾向があり、58%がこの方法を支持しています。一方、デジタル時代に育ったZ世代の40%以上が、オンラインショッピングを強く好むと回答しています。

これらの結果は、物理的な小売がさまざまな年齢層で依然として重要である一方、世代ごとのニーズや期待が異なることを示しています。このため、小売業者は実店舗が提供する具体的な体験と、オンラインショッピングの利便性のバランスを見つける必要があります。

Globenewswire(プレスリリースや配信などをグローバルに展開している企業)の調査によると、消費者の95%が購入前にオンラインで商品を調べ、58%がいい評価をされているブランドに関連する商品にお金を支払いたいということがわかりました4。 このことは、オンラインでの存在感を強化し、かつ評判を管理し続け、消費者と効果的に関わり続ける必要性を強調しています。小売業者は、自社の戦略を消費者の行動に合わせることでブランドの価値を高め売上を伸ばし、信頼できるブランドお金を支払う消費者の意欲を活用することができます。

成功している小売業者は、物理的なチャネルとデジタルチャネルを効果的に統合して、統一された顧客体験を提供しています。高度な在庫管理システムや顧客関係管理(CRM)ツール、高度な分析を活用して、さまざまなタッチポイントで業務を連携させています。イケアのSleepEasyキャンペーンは、クロスチャネルプロモーション、インタラクティブなショールーム、パーソナライズされたオンラインツールを通じて、物理的なチャネルとデジタルチャネルを効果的に組み合わせ、一体感のある顧客体験を提供する代表的な例です  。睡眠に関する教育コンテンツ、シームレスなeコマース統合を組み合わせ、ソーシャルメディア上のユーザー生成コンテンツを促進します。この戦略により、顧客エンゲージメントが向上し、カスタマイズされたニーズが提供され、ブランドの価値が促進されるため、ショッピングがスムーズでわくわくするものになりました。 Sephora では、店舗内や AR ベースのバーチャルアーティストアプリを通じて、メイクアップをできます。消費者からのフィードバックによると、多くの消費者は自分で製品を試せる体験を好む傾向があり、製品を直接体験できることが小売の旅を大幅に向上させています。

 


クリエイター コマース: インスピレーション主導型の購入

かつて「ソーシャルコマース」として知られていたクリエイターコマースは、現在では小売業界における主要なトレンドとなっています。Instagram、YouTube、Facebook、TikTokなどのソーシャルメディアプラットフォームが私たちの日常生活に統合されつつあり、ソーシャルショッピングが日常的な行動の一部になっています。

ゴールドマン・サックスは、クリエイターエコノミーは大幅に拡大し、2027年までに規模が倍増して4,800億ドルに達すると予測しています。さらに、今後5年間で5,000万人のグローバルクリエイターが、年間10~20%の成長率を経験すると予想されています5。この変化により、ユーザーは製品の発見から購入までシームレスに行うことができるため、お気に入りのソーシャルネットワークを離れることなく、アイテムを探したり、レビューを読んだり、購入したりすることができます。

小売業者は、コンテンツクリエイターをブランドの重要なメンバーとして受け入れるべきです。これらのクリエイターは、生のコメントを通して製品を紹介する方法を提供し、消費者と小売業者が推薦するアイテムとの間につながりを構築します。この信頼性は、購入者にとって強力な動機付けとして機能し、信頼性を高め、購入の選択に影響を与えます。注目すべきは、Z世代の51%が、単に製品について調べるのではなく、新しいアイデアを探求するためにソーシャルメディアを利用していることです。さらに、インフルエンサーの推薦も影響力があり、Z世代の買い物客の4人に1人は、ソーシャルプラットフォームで高評価を示す商品を購入する傾向が強いとされています。

クリード( 不動産 投資 ・不動産 運用 事業を行う日本の株式会社)が上海で開催した「カルミナ」のローンチイベントは、体験型マーケティングにおける注目すべき成功事例です。参加者を香水の世界に引き込まれたような感覚を味わえる体験が特徴的です。豪華な会場で開催されたこのイベントには、インフルエンサーやセレブリティが集まり、ソーシャルメディアを通じて認知度が向上しました。芸術的なプレゼンテーションと独自の要素を備えたこのイベントは、Creedのラグジュアリーブランドイメージと完全に一致し、参加者に価値を感じさせました。このイベントは、メディアで大きな話題を呼び、中国市場でのブランド認知度を高め、新しいフレグランスの好印象と販売につながり、クリードの職人技とエレガンスに対する評判を強化しました。有名なドローンメーカーであるDJIは、戦略的パートナーシップ、インフルエンサーマーケティング、コミュニティエンゲージメントの組み合わせを通じて、製品の発売にクリエイターコマースを効果的に活用するもう一つの例です。

小売ブランドがオンラインエンゲージメントを物理的な購入に変える方法はたくさんあります。例えば、小売業者は、ソーシャルメディアで紹介される美学や価値観に共鳴する相互的なディスプレイを作成したり、店内にインスタ映えするスポットを設置したり、ソーシャルメディアのインフルエンサーとコラボレーションしたイベントやポップアップショップを開催して、話題性を生み出すことを検討することもできます。コミュニティエンゲージメントやパーソナライズされた効果は、ソーシャルメディアの影響を補完するだけでなく、ショッピング体験の質を向上させることができる戦略です。オンラインでのインスピレーションと、実店舗でのフルフィルメントの相乗効果は、今日の消費者の注目とロイヤルティを獲得するための鍵です。

 


持続可能な実践:新しい小売パラダイム

持続可能性への取り組みは、もはや選択肢ではなく必須の戦略的イニシアチブとなり、消費者の厳しい目にさらされています。

デジタル・プロダクト・パスポートの導入など、法改正の大幅な変更により、素材のトレーサビリティとエネルギー効率が向上し、ファッション、アパレル、エレクトロニクスの各分野が変革を遂げようとしています。BtoBテクノロジーの分野では、サステナビリティ基準にいい影響を与えるソフトウェアを提供するベンダーが増えています。さらに、Bluestone PIMのような製品情報管理(PIM)ソリューションにより、小売業者は一元化されたデータを活用した予測の改善により過剰在庫を減らし、最終的には環境への負荷を減らすことができます。また、PIMソフトウェアは、環境に優しい製品機能のコミュニケーションを効率化し、消費者がより持続可能な選択を行えるようにします。

全世界の消費者66%が環境に優しいブランドにお金を支払うことをいとわないため、小売業者はリサイクルとアップサイクルを優先する循環型ビジネスモデルを優先する傾向が強くなっています6。同時に、消費者は商品調達の透明性を求め、クリーンラベル製品の人気の高まりに反映されています。マッキンゼーは、サステナビリティを業務に組み込むことで、小売業者のブランドロイヤルティが20%向上すると予測しています7。

さらに、消費者は持続可能なショッピングの選択肢をさらに探しています。Market Data Forecast(さまざまな業界や市場向けにカスタマイズされたレポート、コンサルティング、BIソリューションを提供)は、世界の衣料品レンタル市場は2026年までに約20億ドルに成長し、現在の規模が実質的に2倍になると推定しています。さらに、ボストンコンサルティンググループとVestiaire Collective(フランス発の中古品マーケットプレイス)の調査によると、衣料品、靴、アクセサリーの中古市場は、小売部門の総収益の3%から5%を占めていることが明らかになっています。

ブランドが、独自の再販マーケットプレイスの確立を支援するRecurateの創設者は、再販市場が従来の小売業の11倍のペースで拡大していると指摘しています。世界中の消費者の約75%がリセールショッピングに参加していると報告しており、独自のリセールプラットフォームを立ち上げるブランドの数は2022年から2023年にかけて3.4倍に増加しています。ThredUp(高品質の古着を売買できるオンラインの委託販売およびリサイクルショップ)によると、世界の再販市場は2027年までに3,500億ドルに達する可能性があり、そのうち700億ドルが米国8から来ると予想されています。

 


顧客体験は依然として小売業の成功の礎石です

小売業界が進化する中で、優れた顧客体験を提供することが依然として極めて重要です。小売業者は、アンビエントフレグランスなどの感覚体験を強化することで差別化を図り、感覚的なつながりを育て、居心地の良い空間を作り出します。消費者の健康への欲求に共感し記憶に残る店内を作り上げたり、オンライン購入者のために、香りを取り入れたパッケージを作成したりすることは、小売業者が最新のトレンドに適応できる戦略です。

さらに、ホームフレグランス製品は、人々が日常のストレス要因から逃れようとするときに、家庭の雰囲気を向上させるための不可欠なツールとしてますます重要視されており、小売業者はカスタムフレグランス製品を強力な商材として見ることができます。 特にウェルネスを重視する消費者に対応するため、クリーンで倫理的に調達された成分を強調したカスタムフレグランス製品を提供することで、顧客のニーズに応えることができます。

 


結論

小売業の新時代を乗り切る中で、ウェルネス、サステナビリティ、卓越した顧客体験への重点化は、ブランドと消費者とのつながり方を変えつつあります。小売業者は単に製品を販売しているだけではありません。小売業者、より深いレベルで共鳴する体験を創作し、感情的なつながりを育み、より健康的なライフスタイルを促進しています。フィジタルリテール、クリエイターコマース、サステナブルな実践などのトレンドを取り入れることで、今日の消費者のニーズを満たすだけでなく、競争が激化する市場で持続的にロイヤルティを構築することができます。結局のところ、小売業の未来は、消費者の全体的な幸福を理解し、優先順位をつけ、すべてのショッピング体験が消費者の生活にプラスを与えるような貢献をすることにあります。

マーケティング戦略を小売業の未来に合わせる準備はできていますか?詳細については、お問い合わせください

 

引用:

1. Liying Qian & Marguerite LeRolland (2024). Women’s Health and Self-Care Fashion: Blurring the Lines Between Hygiene, Apparel and Technology. Euromonitor International.

2. MG2 Advisory (2024) Holistic Health: Consumers are seeking wellness in everything they do – how are you showing up for them?

3. Caitlin Nuttall (2024). 10 retail trends for 2025: Charting the future of retail. GWI.

4. Brand Rated (2022). Nine out of ten customers read reviews before buying a product. GlobeNewswire.

5. Zuzanna Martin (2024). Top 11 Retail Trends Shaping 2024 and Beyond. Bluestone PIM

6. Jessica (2024). Eco-Friendly Consumers: 10 Eye-Opening Statistics & How You Can Join the Green Revolution. Marine Biodiversity Science Center.

7. Cegid (2024). Retail Trends 2024: Generative AI, Mobile Commerce & Sustainable Shopping.

8. Alison Zeller (2024). Top 11 Retail Trends (2024 & 2025). Exploding Topics.